我らが創造主、イイスス・ハリストスがつくりしハリストシア。恵み豊かなこの地に、穏やかならぬ影が忍び寄ったのは、いったいいつの事であっただろうか。

 影は影を呼び、凝り固まって大地に黒点を落とす。世界の汚点となりし彼の地より出でし異形のものどもは、世界を蝕む瘴気を纏い、生きとし生けるものに牙を向く。


 永久への繁栄を築いていた人間も、強靭な体を持つ彼らに傷をつける事は適わず、なす術なく淘汰されかけた。地上は血臭と怨嗟と苦悶で満ち満ちる。


 イイススは地上を一瞥し、嘆き悲しみ憐れんで大粒の涙をいくつもこぼす。涙はカチコチと固まって、朱緑黒茶藍黄紫……色とりどりの石となった。

 神の力を秘めたその石は、選ばれた人間に託される。苦しんでいるものを救うために。
 けれど、石を与えられた人間たちは短命のうちに死んでいく。涙一つ分の力と言えども神の力は一介の人間の身には余るもの。


 イイススは慌てて人間の器を支える祝福を送る。イイススの力がその身体を蝕むことがないように。人の子を守る祝福を。
 協力したのは、土神・空神・火神・風神・水神の5神。いずれもかつてのイイススが生み出した神々だ。
 土空火風水。 5神は自分の司る性質の精霊を生みだし、石を持つ人間に必要な分の祝福を送った。

 

 

 かくして。
 使徒は、生まれた。

 

 その証はその身に宿したる聖なる石。
 その役目は神の名代として地上に慈悲を届けること。

 

 

 聖石の使徒と呼ばれる彼らは、神の力を宿し、神の祝福に助けられ、神の名代を果たす者。

 

 

ライアトニー編纂『使徒源録』より抜粋


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